「家を売る女」で北川景子さんがやたら強い女を演じておりましたが、そのときすっごく気になったのがTASAKIの真珠のアクセサリーたち。牙がついてたりとにかく奇抜で、最近のTASAKI攻めてますよね?!おもしろかわいいデザインなのに、お値段はおもしろくもかわいくもなんともないのであれですが・・・。真珠と言ったらやっぱりオーソドックスなネックレスをイメージしちゃいますねえ。ちなみに、婦人科にも「パールネックレスサイン」と呼ばれる病気があります。

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多嚢胞性卵巣症候群って?

簡単に言うと「ホルモンバランスが正しく働かないせいで、排卵がうまくいかない体質」です。

毎週期、月経がくると卵胞ホルモン(FSH)の力で胞状卵胞(ほうじょうらんぽう)が発育し、そのうち1-2個が主席卵胞(しゅせきらんぽう)となって黄体ホルモン(LH)の力で排卵します。しかし、多嚢胞性卵巣症候群では、胞状卵胞たちは主席卵胞というほど立派には発育せず、結果、うまく排卵できないまま居残り、体温も2相性にならないままだらだらと次の月経が始まり、また新たな胞状卵胞が発育するものの、それも同じく排卵しないまま居残っていく結果、中途半端な大きさの卵胞が卵巣表面にたくさん居残っていきます。その数なんと片側12個ずつ以上!

多嚢胞性卵巣症候群の卵巣のエコー写真

上の図を見てください。2-9mmの中途半端な大きさの卵胞たちがきれいに卵巣表面に整列していてまるで真珠のネックレスみたい。この「まさに多嚢胞性卵巣!」といった感じのエコーを、パールネックレスサインと言います。

多嚢胞性卵巣症候群と胞状卵胞が多い人との違いは?

ずばり、月経不順がなければ多嚢胞性卵巣症候群ではありません!月経が順調、つまり基礎体温も2相性で排卵がある方は、いくらエコーでパールネックレスサインみたいに見えても、それは「胞状卵胞が多い人」。つまり、正常です。むしろ年齢が若くって卵胞の残数がたくさん残っているということ。全然問題ありません。よく、「婦人科で卵巣を見てもらったら、プツプツたくさん黒い丸が見えて・・・!多嚢胞性卵巣症候群ってやつではないですか?!」と心配される方がいますが、月経不順があるかどうかが一番大事ですので、よく考えてみて下さい。生理が2-3日ずれることがあるくらいまでは全然正常ですから、ご安心を。もし月経が順調で、卵巣にプツプツたくさん黒い丸が見えたら、それは、あなたが若いってことです。

多嚢胞性卵巣症候群の確定診断は?

第一に、月経不順があること。これが必須項目です。

第二に、卵巣のエコーで卵胞が片側12個以上見える、パールネックレスサインがあること。これも必須。

最後に、ホルモン検査で、LHが高くってFSHが正常のLH>FSHの状態が続いていることです。もしくは、男性ホルモン高値でもよし。

この3つが全部揃って初めて、多嚢胞性卵巣症候群の確定診断です。

他に何か異常値が出ないかというと、抗ミュラー菅ホルモン(AMH)が年齢相応よりも異常に大きい値で出るということがあります。AMHはいわゆる卵巣年齢をはかるなどといわれますが、それは、AMHが卵巣内に残っている卵胞の数が多いほど大きく出るからです。普通は、若いほど大きい数字になります。けれど、多嚢胞性卵巣症候群の人では、排卵がうまくできていないせいで卵胞の残数が多くなり、AMHも大きい数字になってしまうんですね。卵巣年齢は実年齢よりも5-10歳くらい若いことは正常でもありえます。個人差ですから。でも、「やったー!実年齢よりも20歳くらい若いわ!」、いいえ、そんなときは多嚢胞性卵巣症候群なのかもしれません。

多嚢胞性卵巣症候群って何が困るの?

不妊症の原因になります。

ほかに、癌やそのほかの病気になりやすいということはありません。

多嚢胞性卵巣症候群の治療は?

あなたが妊活中か、まだ妊活中ではないのかによって違います

残念ながら、多嚢胞性症候群は体質なので、「薬や手術で一定期間治療すれば、完治できて後は何もしなくても治ったまま」というような病気ではありません。少なくとも「もう今後妊娠はしなくてよい」となるまで、つまり閉経前までは一生おつきあいが必要な体質です。

まだ妊活中でない場合、月経不順を放っておくとポリープや内膜増殖症になりやすかったりします。そのため、月経はやはり1-3か月に1度は定期的に起こしておくべきです。ホルモンバランスを整えるための、低用量ピルが最適です。また、低用量ピルは排卵を抑制しますから(そりゃそうです、避妊薬ですもの)、多嚢胞性卵巣症候群の卵巣のなかの、排卵し残った中途半端な卵胞たちがこれ以上増えないという利点があります。その卵胞たちも、未来永劫居残るわけではなくって、数か月すると自然に吸収されていくので、低用量ピルを半年~1年以上飲むと、それだけで卵巣をパールネックレスサインのない正常な状態に戻すことができます。多嚢胞性卵巣症候群のホルモンバランスの異常は、とくにパールネックレスサインがひどいほど、悪くなることもわかっており、いったん正常な状態に戻った卵巣は、ピルをやめて数か月は正常に排卵して月経も順調にくることもよくあります。しかし、前に言ったとおり、多嚢胞性卵巣症候群は体質であって完治はできないので、数か月たつとやっぱり低用量ピルを飲む前に戻ってしまいますね。だいたい効果は3-6か月でしょうか。短い・・・。妊娠したいと思うまでは低用量ピルをずっと飲み続けて、いざという時にパッとやめてしっかりタイミングをとって妊活すると、多嚢胞性卵巣症候群でも自然妊娠できる可能性はかなり高いです。

「低用量ピルを半年だあ?!そんな悠長なこと言ってらんない、こちとら絶賛妊活中じゃい!」というあなた。やっぱり不妊治療としての排卵誘発剤の力が必要です。「排卵誘発方法の基礎!」でお話したものを使っていくことになります。治療が進むにつれて、使う排卵誘発剤も変わっていくので、何を使うか一概には言えません。

多嚢胞性卵巣症候群と糖尿病って関係があるの?

あると言われています。

多嚢胞性卵巣症候群の確定診断は?のところで、男性ホルモンが高値を示すことはお話ししましたね。この男性ホルモン、インスリンというホルモンが作用するとよりたくさん出やすいことが分かっています。インスリンとは、血糖値を下げるホルモンですから、高血糖の人、つまり糖尿病だったり、糖尿病予備軍の方ではインスリンが多めに分泌されているはずです。そういう方では、過剰なインスリンが卵巣に作用し、男性ホルモンをより分泌させ、結果、多嚢胞性卵巣症候群を悪化させます。

なので、メトホルミン(商品名はグリコラン、メルビン)という、インスリン分泌を抑える糖尿病の薬を使うことで、多嚢胞性卵巣症候群が改善することもあります。けれど、これだけで排卵が完全にうまくいく方は、残念ながら少数の印象ですね。

また、自力でインスリン分泌を下げるためには、運動して血糖値を下げることが重要です。もし、肥満であれば、標準体型まで運動でダイエットすることは必須条件でしょう。多嚢胞性卵巣症候群の方は、特に痩せにくい体質ではありますが、どうか頑張ってください。こればかりは、我々産婦人科医の努力ではどうにもなりません。体重を標準体重にまで減らすことは、多嚢胞性卵巣症候群だけではなく、原因不明の不妊症にも効果があることは、いろいろな研究で実証済みです。よく、「妊娠率を上げるために食べた方がいいものはありますか?」と聞かれますが、あなたがBMI22を超える体重なら、余分に食べるものを探すより、まずは運動して痩せてください。絶対に、絶対に妊娠率があがる、数少ない努力可能な項目です。毎日必ず運動していますか?せめて30分から1時間くらい、まとまった時間をとって歩いたりできていますか?できていないなら、残念だけど、努力不足と言わざるを得ません!!はい、ごめんなさい!(ブーメラン)

嚢胞性卵巣症候群の原因って?なりやすい人は?

肥満の方は、インスリン分泌が増えやすいので、多嚢胞性卵巣症候群になりやすいです。カロリー摂取過多になっていませんか?

カロリー摂取過多のほかは、原因になる生活習慣はわかっていません。

多嚢胞性卵巣症候群にサプリは効くの?

医学的に、「多嚢胞性卵巣症候群を治して妊娠率を上げる」とまで証明された栄養素は、まだ見つかっていません。けれど、「不妊症といえばマカ!」ってくらい古くから強壮剤として知られるマカが、LH・FSHの分泌を上げることが分かっています。多嚢胞性卵巣症候群は、とくにLH、FSHの分泌不全がありますから、試しに飲んでみてもいいかもしれませんね。