『ルパン三世VS複製人間』って覚えてますか?懐かしいですねぇ、今でもたまに夏休みに再放送されたりしますが。あれのオープニング、思い出せます?世界征服を企む敵キャラであるマモー(顔色の悪さとお嬢様スタイルの銀髪が特徴。魔女的なおばあさんかなと思ってたら、しゃべったらいきなりオッサンでびっくりしたなあ・・・)が、昔の偉人たちをクローン人間として複製するんですが、そこに今見ると「おおっ!」となるシーンが。

『ルパンVS複製人間』オープニングより

こちら、遺伝情報である核を抜いた卵子に、偉人の細胞から取り出した核を注入してクローンを作っているシーンです。

もちろん同じではないですけど、顕微授精も同じように顕微鏡の下で、妻の卵子に、夫の精子核を注入して受精をさせます。

実際の顕微授精

では、一般的な体外受精と顕微授精、何が違うのでしょう。

体外受精って?

読んで字のごとし、「体の外で受精させる」のが体外受精です。「ふりかけ法」とも言いますね。英語で言うと、in vitro fertilization(体外での受精)ですから略してIVFと呼びます。マスターベーションで取り出した精液を遠心分離し、活きの良い良好な運動精子だけを抽出します。卵子1個当たり、だいたい10万個/mlくらいの精子をふりかけるのが受精にベストとされているので、そのようにします。これを媒精(ばいせい)と言います。あとは精子の力で受精してもらいます。

受精率は、良好な卵子と良好な精子であっても70%程度。50%を下回るとやや低いなと思います。

精子の精製~媒精だけ(採卵代は除く)で、だいたい1回あたり15万円くらいが相場でしょうか。何個でも15万という病院や、個数が多くなると高くなるという病院もあります。

顕微授精って?

卵子1個当たり、精子1個を、人工的に顕微鏡で見ながら卵子に埋め込んでやる受精方法です。英語で言うと、Intracytoplasmic sperm injection(細胞に精子を注入)ですからICSIと呼びます。必要な精子の数が少なくて済むので、男性不妊の方に適応になります。また、抗精子抗体が強陽性で、卵子の周囲のわずかな卵胞液の抗精子抗体が精子を全滅させるような場合も適応です。それだけではなく、なぜか体外受精では受精率が悪いなどの場合も、最後の手段として顕微授精が選ばれます。

精子の精製~顕微授精だけ(採卵代は除く)で、だいたい1個あたり3-5万円くらいが相場でしょうか。ふりかえるだけの体外受精と違って、1個1個顕微鏡で処置をしていくので、まとめて何個でもいくらというより、1個あたりお金がかかる病院の方が多いです。

顕微授精のせいで胎児に染色体異常や奇形が生じることはありません

体外受精と顕微授精、どっちが良いの?

可能なら体外受精のほうが、卵子に針を刺すというストレスがないですし、経済的にも有利です。

でも、顕微授精のほうがやはり受精率は高めな傾向があります。

どっちというのは難しいですね。抗精子抗体が強陽性だったり、精子所見が不良でなければまずは体外受精にトライして、受精率がいまいちであれば顕微授精に次からうつるというのが一般的ではないでしょうか。

じょいはやったの?

やりました!抗精子抗体は陰性と分かってはいましたが、もしかしたら他の原因で受精障害があるのかもと思ったので、初回はスプリット法で行いました。結果、体外受精も顕微授精も受精率は30-40%とそこまでよくない結果でしたが、幸い2つの方法に差はなかったので、そのあとは体外受精だけにするという方針にしました。原因は分からないままですが、何かの受精障害があるのでしょう。「卵子の質」という言葉で片づけられてしまうやつですね。

受精障害や発生障害については、「胚ができない・・・受精障害と発生障害」で工夫や治療法を説明しています。