お盆頃になると妊活中・妊娠中の方から毎年聞かれる質問があります。「ダメって知らなくって鰻丼を食べちゃったんです!大丈夫ですか?!」と。丑の日もあるし、お盆で里帰りすると実家でごちそうになるんでしょうかね。いいですねえ。ちなみにもちろん「ダメ」ではありません。「妊婦に鰻はダメ!」とまるで一切れも食べてはいけないような書き方をしているものもあり、これでは不安をあおられてしまうのは当然です。正しく知って、おいしく食べましょう。
- なんで妊活中は鰻がダメって言われるの?
- ビタミンAって?
- ビタミンAの妊娠への影響って?
- 妊活中にとったほうがいいビタミンAの量って?
- ビタミンAが豊富な食べ物って?
- βカロテンもビタミンAなんでしょ?
- で、結局どうしたらいいの?
- レチノール入り美容液は妊活~妊娠中も使えるの?
なんで妊活中は鰻がダメって言われるの?
鰻にはビタミンAが豊富に含まれており、このビタミンAは取りすぎると過剰摂取となり胎児奇形を引き起こすことがあるからです。
ビタミンAって?
ビタミンA、別名レチノールとかレチノイン酸とか言いますが、肌や骨、目の機能を保つのに重要なビタミンです。「レチノール」?「レチノイン酸」?そう、女性なら聞いたことありますよね!シミ・シワによく効くといわれる美容液って最近「レチノなんとか」って名前、多いですものね!これがまさにレチノール、つまりビタミンAです。ビタミンAは肌再生機能に優れていますので、お肌のターンオーバーを早めてシミを薄くしたり、美白の効果もあります。レーザーでも消せない肝斑は、ハイドロキノンで漂白→トランサミンで強すぎる漂白の炎症を抑え→レチノイン酸で新しい表皮を再生という方法が美容皮膚科では最も強力です。まあそうはいっても3か月くらいは根気よくやらないといけませんが。何事も継続ですねえ。
塗っても効果のあるビタミンAですが、食べてももちろん効きます。紫外線の気になる夏に鰻というのはお肌の面でもいいのかも。しかし、食べれば食べるほど良いかというと、そうではありません。ビタミンAは、ビタミンD、ビタミンEとともに脂溶性ビタミンといって、取りすぎると体の皮下脂肪に貯蓄されてしまうのです。その逆、水溶性ビタミンであるビタミンB、Cなどは余計な分は尿にとけてそのまま排泄されますから、取りすぎになることは決してありません。おしっこが蛍光イエローになってびっくりしますけどね・・・。
ビタミンAの妊娠への影響って?
不妊には関係しません。たくさん取ったからといって残念ながら妊娠しやすくなるわけではないのですが、妊娠判定陽性をいただいたあとからとっても大事で、不足による欠乏症も過剰摂取による過剰症も胎児の奇形を引き起こすことがあります。ちょうどいい量を取ることが大事です。
妊活中にとったほうがいいビタミンAの量って?
ビタミンA推奨摂取量は1日あたり700μgです。これだけ取っていれば、ビタミンA欠乏症による胎児奇形は起きません。その4ー5倍、1日あたり3000μgが過剰量です。これを超えると胎児に奇形が出ることがありますが、もちろん、過剰量が1日でも超えたらアウトではありません。人間の体はうまくできていて、週1くらいの過剰ならきちんと排泄してくれますからご安心を。
国立栄養・健康研究所が行った「健康日本21」という調査では、日本人は平均で1日あたり500μgしかビタミンAを摂取していないのだそうです。妊娠中以外で、健康を保つのに「まあこれくらい取っていればよいでしょう」というビタミンA(推定平均必要量といいます)は1日当たり500μgですから、現代の日本ではビタミンA欠乏症は普通の暮らしをしている限りほとんど起きないということになります。実際、ビタミンA欠乏症による胎児奇形の報告もほぼありません。けれど、妊活中なら、自信をもって推奨摂取量700μgはきちんとクリアしておきたいところですよね。せっかく妊娠したのに余計な心配を増やしたくないですもの。
ビタミンAが豊富な食べ物って?
レバー、鰻が代表ですね。ビタミンAがどれくらい含まれているのか、まとめてみました。
- 鰻100g(半匹分。お店の鰻丼1人前):1500μg
- 鰻肝100g(肝串2本分):18000μg
- 豚レバー100g(ニラレバ1人前):10000μg
おおお、さすがの含有量!すごいですね!鰻+レバーの合わせ技、肝串の威力は半端ないですね!過剰量は3000μgですから、毎日鰻丼はぎりぎりセーフですが、肝串・ニラレバ定食はせめて月1くらいに抑えた方が妊婦さんは安心ですね!妊娠しない旦那様諸君はすこし緩めの基準でいいですが、週1くらいにしておきましょうか。
そのほか、チーズ、卵も多少ビタミンAが多めですが、食べる量がそもそも少な目なのと、レバー・鰻に比べたら正直どうでもいい量ですので、気にしなくてよいと思われます。
そういえば昔おばあちゃんが肝油ドロップをやたらすすめてくれましたねぇ。知ってます?若い方は知らないかも。鰻とかサメとか、魚の肝からの抽出油です。戦後のビタミンA不足を補う目的で広がったんでしょうねぇ。食糧事情が改善したせいか最近はめっきり見なくなりました。これこれ、このレトロな缶!!
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βカロテンもビタミンAなんでしょ?
βカロテンは体のなかでビタミンAに変換されます。しかし、全部が全部ビタミンAになるわけではなく、βカロテン12に対して、ビタミンAは1にしか返還されません。βカロテンが豊富な食べ物といえば緑黄色野菜ですが、どれくらいの量が含まれているのでしょうか。
- 濃い緑色の葉っぱ系野菜(モロヘイヤ、ホウレンソウ、ニラ、小松菜・・・)100g:βカロテン3000μg、つまりビタミンA250μg
野菜の推奨摂取量350gをとって初めて、ビタミンAの推奨量になるかどうかですね。でも野菜中心の生活にしていたら越えてしまいそう・・・と心配していますか?安心してください。βカロテンは体にビタミンAが不足した時だけしかビタミンAに変換されません。つまり、緑黄色野菜のβカロテンには、ビタミンA過剰症は絶対起こらないのです。うーん、野菜が体にいいって、こういう意味もあるんでしょうね。なので、βカロテンに関しては、気にする必要がありません。
サプリにしてもビタミンAよりβカロテンとして含まれているもののほうが安心かもしれません。こちらだと、ビタミンAの1日推奨摂取量が補えて、しかもβカロテンなので過剰症にならなくて安心。葉酸も推奨摂取量を越えてしっかり含まれています。産婦人科で一番よく置いてあるサプリですね。
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で、結局どうしたらいいの?
鰻・レバーは月1にして、あとは普通の食生活+βカロチンで補うサプリでビタミンAについては心配いらずです!
レチノール入り美容液は妊活~妊娠中も使えるの?
使えます!市販のものであれば皮膚から吸収される分はごくわずかであり、過剰症にはなりません。ただし、美容皮膚科で本格的に行うハイドロキノン・トレチノイン療法は、レチノールが濃すぎて範囲によっては体内に吸収されてしまうので、妊娠中はやめておいたほうが無難といわれていますね。実際、それで胎児奇形が起きた症例は世界的に1例も報告がないので、たぶんそんなに心配するほどではないのでしょうけど。まあどうせ妊娠したらメラニン大爆発でハイドロキノンによる炎症性色素沈着がひどくなりやすいし、せっかくやっても思ったほどきれいになれないと思います。結構お高い治療ですし、もったいないですから、産後にしましょう。(病院でも基本的にOKしてくれないはずです)